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「真白は服見に行ったりしないの?」
「んー……あまり興味ないんだよねぇ」
「えーもったいない!真白可愛いから絶対いいのあるって!」
「確かに……私服とか見てみたいな」
二人からの期待の眼差しを「機会があればね」と受け流す。あいにく私は、人に見せられるようなお洒落な服も、人に胸を張れるファッションセンスも持ち合わせてはいない。
そもそも家からあまり出ないから服はお母さんに任せっきりだし、学校の授業で行う美術は昔から……
………大っ嫌いだったし。
「はい!この話題おしまい!他には何かないの?」
「え~気になるのに………あ、じゃあ今日の放課後なんだけどさ~」
自分で振っておいてあれだがよくパッと話題が思い浮かぶな………羨ましい限りだ
「みんなで行こうよ!部活紹介!」
「あ~、そういえば今日からだっけ」
この高校は特別頭が良いわけでも、何か専門的な知識を得られる授業もない。だがそれでも人気がある理由が、その膨大すぎる部活動の数だった。
特定のスペースを使う運動部はもちろんのこと、吹奏楽や美術といったものから茶道や新聞といった幅広い文化部。
それは学校の名物といっていいほどで、「好きを力に」という校風にふさわしい規模だ。
「せっかくこの学校に来たんだし、入らないと損じゃない!?」
ホームルームで先生が言っていたことだが、部活の体験入部期間は今日から二週間。そしてそのうち一週間は先輩たちの勧誘が許されている期間があり、ちょうど私の席から見える校門までが一気に人で溢れかえるらしい。
その光景は何度も夢に見たことがある。中学校は帰宅部を貫いてきた私にとって、青春と部活はイコールで繋げられそうなくらい憧れの強いものだ。
…………が、
「うん……そうだね」
充満する誰かの感情を横目に見ながら、私は無理やり微笑んだ。
どうせまた、後で傷つくことになるだろう。
どうせまた、やらなきゃよかったと涙を流すのだろ
う。
私の持つ希望よりも少し大きい不安が、意思とは反対に天秤を傾けさせる。
分かっている、世の中悪いことだらけじゃないって。
良いことなんて、やらなければ見つからないんだって。
そう思いながらも、確信が持てず保身に走ってしまう。
弱虫な私を、私はどこかで嫌ってしまう。
白をベースに様々な感情が入り交じる教室の空気を、私のため息が汚していった。
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