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一階から順番に辿り、二階まで回り終えようというときに恵がぽつりと言った。
まあそんな話題くらいだすよな、、、と考えてはいたもののやはり動揺してしまって、上手く口が機能しない。
「私は吹奏楽をやってましたわ。さっきは決めてないって言いましたけど、もしよければこっちでもやろうかと」
「おーいいね!確かにそんな感じするもん!」
「吹奏楽っぽいって何ですか、、、真白は?」
「えっとぉ、、、」
二人の視線がやけに鋭く刺さっている気がする。私の頭には一瞬、嘘をつくことさえもよぎった。
「私、部活やってないんだよね~」
「そうなんですか、、なんだか意外ですね。スポーツとかやってそうなのに」
「確かに。もしかして、、?」
恵が背伸びして私の目をのぞき込む。その瞬間にズキリと頭が痛んで、思わず膝を崩しそうになった。
ーーーー嫌だ。
フラッシュバックする昔の景色とブラックホールのように吸い込まれる視線。それがとても怖くて、いまにも突き飛ばしたくて。
気づかれないように体に力を込めても、小刻みに震えているのが自分でもわかった。
「もしかして運動が苦手とか!?ちょっと今度の体育の時間バトミントンしようよ!」
「ちょ、、恵テニス部だったんでしょ!?怪我でもさせたらどうするの?」
「大丈夫だいじょうぶ。死にはしないって」
笑顔を浮かべながら離れる恵の顔を見て、なんとか息を整える。垣間見えた二人の感情はとても温もりに溢れていて、根っからのいい人なんだなと感じるも、同時に、本当の私を知ったらどんな反応をするだろうかと考えた。
、、、普通の人と違う、本当の私を。
「ん?おーい!」
その声で我に返ると、廊下の先から誰かが歩いてくるのが見えた。
「君、あの時の子だよね?部活の見学中?」
「、、、?あ、先輩!お疲れ様です!」
「今ちょっと忘れてたな、、、?まああれから話してないから当然っちゃ当然か」
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