色彩 3

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「はぁ………」 コンクリートの壁に背中を預けながら、私は一人ため息をつく。何だかあのまま家に帰るのが嫌で学校の外郭をなぞるようにぶらぶらと歩いてみたが、知人はおろか、生徒の影ひとつさえも見つけられなかった。 結局私は、恵からの質問に対し首を縦に振った。 それは、嫌々でもなく友達がやるからという理由でもなく、先輩の言葉に魅了されたこと。そして、ほんの一瞬だが彩られた世界に興味を持ったからだ。……例え過去に、それを拒む出来事があったとしても。 『ーーーーー化け物!!』 何度言われても聞き慣れない、トゲのような言葉がフラッシュバックする。まるで薬の効果が切れたように突然痛みだした頭に耐えきれず、私はその場にしゃがみこんだ。 「……どうしよっかなー……」 部長にやると言ったところで、はいそうですかとならないことは分かっていた。いざ入部届けを受け取ると、それの重さに心が崩れそうになる。 「本当にいいの……?」と、自分が自分に言ってるような気がして。 だって、前を向こうとしただけで頭が痛んで、何かをしようとするだけで心がストップをかけるのだから。 自分は迷惑をかけてしまうのは明白なのに、それでも幸せになれる未来を夢見ているのだから。 まるでやりたいという気持ちと、やってはダメという気持ちが、私の体で綱引きをしているようだった。 「はぁ………」 膝を抱え、誰もいない空間にため息を混ぜていく。 このまま誰も気づかないなら、いっそそのまま、 夕陽に紛れ溶けて消えてしまいたかった。 「ーーーーこんなところで何してんの?」 突然の声に驚いて頭を上げると、その拍子に引いてきていた痛みがまたぶり返す。 「……………先輩?」 そこには、先ほどと違いちゃんとした制服に身を包みながら、私を見下ろす潤先輩の姿があった。部活の片付けが終わってその帰りだろうか。いや、それにしては妙に遅すぎる。 「生徒会の見回りだよ。こうゆう日は特に遅くまで残ったりする奴いるから」 「な、なるほど……」 「そう。見つかったのが俺でよかったなー。他の人とか先生だったらうるさかったよ?」 「はは……」
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