色彩 3

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静寂が再び二人を包み込む。 言うべきか言わないべきか。言っても解決するか分からないし、だが言わなくても悩むだけ。 道を歩いている人が誰もいなくてよかった。こんな状況であるこうものなら、状況判断が上手くできなくて色んなものにぶつかっていただろう。 「…………私なんかが、本当に部活に入っていいのかなって思ってるんです」 気がつけば、そうポツリと呟いていた。まるで心が、微かな希望に助けを求めているように。 「別にやりたくないって訳じゃありません。むしろやりたいって気持ちはありますし、先輩の言葉に感動だってしました。でも……」 なぜ私がこんなことを口走っているのか、私にさえ理解できなかった。先輩は静かに耳を傾けたままうつむいていて、ここからじゃ表情が見えない。 「………みんなの足を引っ張ってしまうんじゃないかなって」 みんなにとっての普通が、私のせいで台無しになってしまうことがあった。 私にとっての普通が、みんなにとっての異常だと知ったことがあった。 いつからだろう。反射的に笑みを作って、誤魔化せるようになったのは。 いつからだろう。自分の心に、嘘をつくようになったのは。 このやりたいという気持ちさえ、もしかしたら本当じゃ無いのかもしれない。恵と優花があの場にいなければ、もしかしたら入ろうなんて思わなかったかもしれない。 そして二人と一緒の部活に入って一緒にいる時間が増えれば、当然隠しきれないところが生まれるだろう。 そうなれば全てが無駄になる。これまでも、またこれからの3年間も。 あの事が……バレてしまったら 「…………それはさ」 先輩の声は、なぜだかやけに落ち着いていた。 先輩は優しいから、よく相談を受けたりするんだろうか。その目は突然のことに驚いているようにも見えないし、かといって軽蔑しているようにも見えない。 私にとっては唯一無二である私という存在も、先輩から見れば有象無象の中の一人なのだ。 二人を取り巻く空気が、徐々に歪み始めていく。どうせ誰も「私」を知らないんだ。いや別に、知ってほしいなんて……… 「それは、君が色を見えないことと何か関係があるの?」 「………………え?」 冷たい風が、ひゅうという音を立てながら二人の間を通り抜けた。
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