間章

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一年生の教室は、どうやら三階にあるらしい。円を描くように配置された階段を上りながら、私は先生と学校のルールや小学校との違いについてなど色々なことを話した。今日出会ったばかりでまだ名前も覚えていない人を「先生」と呼ぶのがどこか不思議だったが、そこにも、いつか慣れる日が来るのだろうか。また久しぶりに、友達と授業を受けられるだろうか。 ごく少量の不安と溢れんばかりの期待が、いつの間にか疲れ切ったはずの足を早めさせる。 入学式さえ出られなかったんだ。なるべく早く、みんなとの距離を縮めたい。 階段を上って長い廊下をまっすぐ進む。すると壁のところで二手に分かれるから、そこを右に行ってすぐが教室。 先生の説明を復唱しながら、私はようやく扉の前に立った。背伸びをしてようやく見える教室の中には、真面目な顔で机に向かう生徒たちの姿が見えた。いま一年生は自習の時間らしく、それはどうも、私を迎えるためらしい。中にはちらほらと小学校が同じ人たちの姿もあって、嬉しさと感動が込み上げてきた。 先生と顔を見合わせて、少し大げさに深呼吸をする。 理不尽な出来事で失った数か月を。 色の失った世界を彩る日常を。 全て取り返してやろうと、私は期待に胸を膨らませていた。 「じゃあ、、、行くよ?」 先生からの問いに、今年で一番大きい声で返事をする。 そして二人で、少し重たい教室の扉を開けた。 、、、、きっと幸せになれると、心の底から信じて。
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