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と、なぜか妙に余裕ぶって1つの問題が解決したと同時に、また新たな問題が発生した。
「あぁ、この学校は学年がネクタイやリボンの色で分かるんですよ。俺の青は3年生。それで君のしている緑は1年生のなので」
色で分かる………その言葉を聞いたとたん私の表情が曇ったのを自分でも悟った。それはなかなかに不便で、もしかしたら気づかぬうちに、今回みたいに失礼なことをしてしまうかもしれない。
「ははは、まあそんなことは後々覚えていけばいいんですよ。それより入学生は早めに登校でしたよね?俺もそんなに時間無いので、少し急いでも大丈夫ですか?」
「え……あ、はい」
電車を待つのに急ぐとは、変な言い方をするな…
そう心の中で思いながら、離れていく背中を追う。
よかった……なんとか遅刻せずに済みそうだ……
入学早々遅刻するなんて許される訳がない。せっかく夢に見た高校生活だ、無駄にしないようにしなければ。
そう前向きに捉える反面、まだ胸に突っかかるものを感じる。これからきっと部活の勧誘や委員会といったものがあるなかで、先輩たちとうまくコミュニケーションが取れるかがひどく心配だったから。
「……っ!危ない!」
「………え……」
先導していた彼が目の前に現れたと思ったら、いつの間にか体は宙を舞っていた。前からも後ろからも声をかけられたら驚くなんて、私はもう一生誰かと話すことはできないんじゃないだろうか。中学のときはそうでもなかったんだけどな………と、呆然と天井を見上げながら考える。
………これが走馬灯か
「いったぁ!?」
「ちょ……大丈夫!?」
彼が駆け寄ってくれる。もうこれ以上辱しめを受けさせないでくれと心から願ったが、それ以上に変な感覚に襲われる。まるで世界が猛スピードで動き始めたような、転んだはずの自分の体が、まだ勝手に動いているような…
「はい、すいません……ってあれ!?私の鞄は!?」
転んだ拍子に投げてしまったのかと辺りを見渡すと、鞄はなぜか、一人でに前へ前へと進んでいた。
それだけではない、周りの人も、まだ立ち上がっていない私もそのままの形で前に進み、何かの工場のような光景にいささか恐怖すら覚えた。
「………もしかして、動く歩道は初めてだった…?」
それを言ったときの彼の顔と、5分おきに電車が来ることを伝えられたときの私自身の絶叫は、なかなか頭の中から離れなかった。
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