間章

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膝を襲う痛みをこらえながら、私はまた立ち上がった。何か異変に気付いたのだろうか。いつの間にか周りには、私たちと同じように文化祭の準備に取り掛かっていた生徒たちがチラチラと私の様子をうかがっている。その人たちからは若干の不安や心配と、何か好奇心のようなものが感じられる。 どうして今日に限って人の感情がよく見えるのだろう。事故にあってしばらくしてからはあまり気にはならなかったのに。 カバンを学校に忘れ、上履きで歩いてきたことに気づいたのは家の前についてからだった。はじめはあんなに苦労して歩いていた道も、一年もたてば案外慣れるものだ。 「はぁ、、、はぁ、、、」 あいにく母は仕事中で、また鍵はカバンの中のため家の中に入る手段はない。切れた息を整えながら、私は仕方なく気の赴くまま歩きだした。 「(あの看板は青色。、、、あの信号は今は赤) 昔お母さんと一緒に、町の中の色を覚えたのを思い出した。目に留まるものを口にしては、その色の名前を教えてもらう。いまとなってはもう、それがどんな色なのかは覚えていないが。 少し落ち着いてきたからこそ、先ほど起こった出来事が脳内にフラッシュバックする。 何もしていないのにクラスメイトに陥れられたこと。友達にまで迷惑をかけてしまったこと。 色が見えないことを、「異常」とまで言われたこと。 「私だって、なりたくてなったわけじゃないのに、、」 しょうがないという気持ちと、しょうがなくないという気持ち。自分の幸せや自分の人生を誰かにめちゃくちゃにされたと思うと、とてもじゃないが気が狂ってしまいそうになる。それでもその感情は、むやみに表に出していいものではない。 、、、じゃあどうしろっていうんだ。 このまま一人で抱え込んでいたら、いつか絶対押しつぶされてしまうだろう。 だからと言って誰かに手伝ってもらっても、不気味がられるか巻き込んでしまうのだろう。 どちらにせよ先延ばしにしているだけで、本当の解決には至らない。 、、、じゃあどうすればよかったんだ。 逆に何もしなければよかったのか?誰とも接さず誰の目にも触れず、教室の隅っこで時間を浪費していればよかったのか? そんなの、、、、全然、、面白く、、、
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