第1章 色彩

3/7

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
・・・ 国立聖栄高等学校。一見お嬢様校のような名前のそれは、広大な敷地を持つだけの普通の共学校だ。とある事情でこちらへの引っ越しが決まった際、私が土下座までして「高校に行きたい」と頼んだ時に母が唯一、オーケーを出してくれた学校。なぜこの学校だけよかったのかは知らないが、学力が少し足りなかったため寝る間も惜しんで勉強したのは今となってはいい思い出だ。 「よかった、、、間に合ったぁ、、」 そんな憧れの学校に、入学式早々汗だくで入る私。夢に見た高校生活とは、すでに天と地ほど離れていた。 「じゃあ、俺はこっちだからもう行くね。入学式、楽しみにしてるよ」 「あ、はい!ありがとうございました!」 頭を下げて上げるころには、彼は人ごみに紛れ遠くに行ってしまっていた。優しくて、その上顔も整っている好青年。絶対モテるだろうなとどこか人ごとに思いながら、私は自分の頬を叩いて気合を入れなおす。 「、、、よし!」 そうして何とか入学式の受付を済ませ、学校のしおりと新入生用の小さな花を受け取る。受付も先生ではなく先輩方がやっているようだったが、特に何の問題もなくスムーズに進めることができた。なんだ、やっぱり私はうまく話せるではないか、、、、あの先輩を除いて。 集合場所である教室の椅子に座ると、そのとたん一気に疲れが押し寄せてくる。まあそれは十中八九私のせいなのだが、初日だしこんなこともあるだろうと勝手に振り切る。 どうやら新入生は私が最後みたいで、先ほどの人込みは在校生と新入生の親だったようだ。 お母さん、仕事が忙しいらしいけどちゃんと来てくれるかな、、 「もうすぐ始まりますので、新入生の方は廊下に並んでくださーい!」 声が聞こえ、不安になっている場合ではないと頭を大きく振る。だが先ほど受け取った花を胸につけると、それだけでなぜか足が震えた。 友達はできるか、勉強にはついていけるか。 校則は守れるか、先輩とちゃんとコミュニケーションアプリを取れるか。 、、、、普通の生徒として、生活できるだろうか。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加