第2章 クランク・イン

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その辺私も疎いな~、とどこかネガティブになりながらも二人の帰りを待つ。先程は反対よりの意見を言っていた二年生たちもどこかそわそわしていて微笑ましかった。 「あ、そうだ!ただ待ってるのも暇だしこれ見ない?」 「あれそれ、潤先輩が見たいって借りてきた奴じゃないですか?」 「それに……まだ発声もなにもしてないです……」 「細かいことはいいのいいの!鬼のいぬまになんとやらだよ」 鬼というか美咲さんのほうが誘惑してくる悪魔的な感じなのだが……。そうツッコミを入れるより早く、美咲さんはDVDをセットし始める。 これもう、部活中というよりも休日のほうがしっくりくる気が…… そう思いながらも、流れてきた映像に目を配る。最近よくある他の映画の広告が一通り終わると、何の前ぶりもなく本編が流れ始めた。最初は興味が無かったものの、徐々にその世界観に魅了されていく。物語は奇しくも、私が最近小説でハマっている転生もののアニメーションだった。 潤さん……こんなのも見るんだな…… なぜか妙に親近感が湧き、同時に画面に引き込まれていく。これは俗にいう、神作というものではないだろうか。 「ただいまー………ってなに見てんだよ」 どれくらい時間がたったのか分からないほどの集中。クーラーの聞いているはずの教室でも、いつの間にか手には汗が滲んでいた。 「ちょっと早くない?まだいいところに入ってないよ」 「なんで帰って来て怒られなきゃいけないんだ……?てかそれ俺が見たいって借りた奴じゃねぇか」 「まーまー固いことはいいから~………で、どうだったの?」 「余裕。危険なことさえしなきゃ何やってもいいだとよ」 「ああ………さっすが……」 会ったことはないが、話だけでも私の中の教師というイメージが崩れ去っていく。そ、そんなにダメな人なんだろうか……。 「と、とにかく。最低限の土台は出来たから、こっっから色々考えていかないとだな」 「そうだね。何をするかさえもまともに決まってないし、移動手段とか問題だって山積みだし」 「かといって、勉強も疎かに出来ないしね~」
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