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「ずっと前から好きでした!私と付き合ってください!」
カラカラになった喉で、それでも必死に声を出す。
裏返りながらも確かに言葉になったその気持ちは、果たして目の前の彼に届いただろうか。
顔が赤くなっているのが自分でもわかるし、心臓はまるで自分のじゃないみたいにうるさい。
たかが告白。そう考えていたのにまさかこんなに緊張するなんて思ってもいなかった。まっすぐなんて見れるはずもないし、ぎゅっと握りしめられたスカートは風になびき視線を安定させない。
ほんの数秒の沈黙。彼が答えを出すまでの時間が、私には永遠のように思えた。
「あー、、えっと、、、、」
その声につられて顔を上げると、彼は困ったように頬をかいていた。すぐに答えを出さなくてもどかしいと思ったが、同時に、言いにくい言葉なのかもしれないと体の血の気が引いていく。
やっぱり私なんかに、告白なんて無理だったんだ。
周りから「あんたなら大丈夫!」ともてはやされ、「何事も経験だよ」と背中を押され。
その結果がこれだ。
もういっそ早く、私のことなんて考えず、ダメだと言ってくれ。
心の中で叫んだその言葉が聞こえたかのように、彼の重い口が、いまゆっくりと開き始めた。
「、、、、全然ダメかな。リアリティがない」
「ですよねぇ、、、」
私の中で作りあげていた世界が一気に消え去り、辺りは誰もいない教室から人だらけの砂浜へと転換される。視界の端にも入らないようにしていたのに、その瞬間笑いをこらえる部員たちが目に入って思わず睨んだ。
だいたいなんだ、リアリティがないって。
誰が一世一代の告白を、こんな人とカメラに囲まれた場所でやるというのだ。しかも友人や先輩といった人に見られながらなんて、いくら演技の練習だとしても荷が重すぎる。
、、、まあ、それが映画撮影というものなんだろうけども。
「なんていうか、言葉がまだ台本を読んでる感じっていうか、機械的っていうか、、、まあそこは慣れの問題だけど、自分の中でキャラクターを作り出すのは重要かも。真白はこのセリフを言うって聞いて、どんな人物とか状況を思い描いた?」
「えっと、、、放課後の誰もいない教室で、女子高生が好きな人に告白するっていうのだけです」
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