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「そっか。それでもいいけど、例えば仲のいい元気な子と内気な子だと話し方とか間の開け方に違いがあるように思うでしょ?あくまでキャラを演じるんだから、これからはその練習もしていこっか」
潤さんに言われたことを頭に入れながら、私は少し離れて見守っていたほかの部員たちと合流する。今日は特に罰ゲームとかではなく技術指導のための演技なのだが、そういえば大抵告白の言葉が用いられる。高校生にもなるとやっぱりこんな話が中心になるのかなと思ったが、このセリフは全部美咲さんが考えてるんだと思い出すとなぜだか妙に納得した。
「ちょっと、いつまで笑ってるのよ」
「ごめんごめん、、、!でも本当に面白くて、、!」
こっちは全然面白くないっての、、。
と、視線をずらした先に一人だけ笑っていない人の姿を見つける。私としてはそのほうが嬉しいのだが、でもなんだか、嫌なことがあったような、、?
「大樹さん、何かあったんですか?」
「いや、、、やっぱり俺だったのが悪いのかなって、、」
「え!?」
大樹さんがそう言った瞬間、私たちを取り囲む一層笑い声が大きくなる。ただでさえ笑いのツボが浅い恵に関しては涙まで出していたが、その言葉の意味が分からない私はただ呆然と立ち尽くすことしかできない。
「真白がセリフを言った後すぐに、美咲さんが『大樹の時より全然いいじゃん、、』って言ったのよ。それが面白くって、、」
優花がそう言ってようやく、みんなが何に笑っているのかに気づいた。それと同時に、なんだか申し訳ないという感情に襲われる。
「い、いやでもほら!大樹さんのがあってこそ問題点が見つかったっていうか。階段でいうところの一段目っていうか、、!」
「真白ちゃん。それフォローになってないよ」
その言葉に再び笑い声が生まれる。
まさかそこまで引きずっていたとは、、。いや多分美咲さんあたりが冷やかしたんだろうな。私は何も悪くない。うん。
「おーい、片づけ終わったから中に入れー!ミーティングすっぞ~」
私の告白シーンを撮るためだけにセットされた機材を片付けると、そこで練習はひと段落した。といってもまだ午前の部が終わっただけで、休憩を挟んだら午後の練習も残っている。強化期間も数日が過ぎて、少しずつ本格的な作業に乗り出してきていた。
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