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特に映画を作るという大雑把な目標から、誰かに見せる作品を作るという目標に代わったのだ。元から手を抜こうなどとは思っていなかったが、具体性が上がったことによって不安要素も見え始めてくる。それを取り払うために、話し合いという時間はとても大切だ。
「さて、介護施設で上映すると仮定して、どれくらいの長さにしようか。それによって撮影の規模とか掛かる時間がだいぶ変動するんだけど」
「ちなみに、よく映画館とかでやってる一般的な90分のだとどれくらい時間がかかるんですか?」
「この人数と学校の機材だと、、、、一人か二人は死人が出るな」
話のまとめ役である部長がにこやかにそういうが、さらっととんでもないことを言っている。それに同調するように、先輩方も苦い表情をした。おそらくだが、過去に何かあったのだろうか。
「簡単なストーリーだったら、10分とかでも完結まで持っていけますよね」
「長いと、、、編集大変、、、」
「でも短すぎても面白くないしなぁ。せっかくやるんだから盛大にしたくない?」
様々な意見が飛び交って、それをみんなで吟味して結論を出していく。そして何も知らない私たちが想像していたよりもずっと早く、映画の土台が決められていった。
前からある程度分担されていた役割の中に一年生が自分が好きなところに入り、だが映画の中でもキャラクターとして登場する。時間は大体30分程度。そのくらいなら多少何かあっても対応できるらしい。
そう潤さんが言っただけで、私は一つ理解などしていないのだが。
「さて、あとは物語を考えるだけだな。一応CGとかも使えるから何でもできるといえばできるんだが、、、」
「あまり激しいのとかだと、上映場所的に合わないかもね」
「はいはい!前やった上映会のはどんな感じだったんですか?」
映画研究部のミーティングになぜかちゃっかり参加している店長さんに美咲さんが質問をすると、潤さんが間髪入れず「静かな感動系のやつだったな」と言った。
そうか、確か美咲さんと博人さんは、潤さんより少し遅れて部活に入ったんだった。
潤さんが一年生の時に三年生だった人たちがいなくなって、人が足りないからと誘われたのがきっかけだと博人さんが言っていた。そのおかげで、高校生活がより楽しくなったとも。
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