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興味だなんて、そんなに大それたものではない。ただ一つだけ、これしかないと思ったのは事実だ。
もしもの世界を想像するのは、悲しくも私の得意分野だった。
なにせずっと、そんなこと をしながら生きてきていたから。
思い出されるのは、病室でただ外を眺めながら一日を過ごしていたあの日の記憶。積み重ねられた本を頼りに、自分の頭の中に思い通りの世界を作り出す毎日。
想像力というぐらいだ。それは一種の力であり、武器にもなりえる。ただそれはやはり使いようで、幼かった私には、それで自分を傷つけることしかできなかった。
だけどもし、それで誰かの力になれるなら、、?
もしも、、、、自分の考えを形にできたら?
私はいつの間にか、手を強く握りしめていた。
熱い。それが夏の本来の感覚なのか、それとも私から生まれた何かのせいなのかは分からない。
けれど心のどこかで、そのことに魅力を感じたのは疑いようもない事実だ。
まったく、 人生とは思いもよらない所で繋がってるかも知れない。それで過去の苦しみが消える訳ではないが、何かのきっかけになるということは身をもって体験している。
「はい、、、少し」
もしかしたら、と自分にもできることが見つかっただけでこうも前向きになれるのか。ずっとどこかで危惧していた仲間外れになるという心配も、いつの間にか頭から消えていた。
「そっか、じゃあやってみれば?」
「、、、え?」
あっさりと告げられたその言葉に呆気にとられているうちに、美咲さんは立ち上がって息を大きく吸った。
「潤~!真白ちゃんが物語考えたいって~!」
「ちょ、ちょっと美咲さん!?」
話し合いは行き詰っていたのか、セミの声だけが聞こえる部屋の中に大きな声が響き渡る。保たれていた平行線は私のせいで一気に崩れ落ち、急な進展に驚いたみんなの視線がとても痛かった。
「、、、、真白、本当か?」
珍しい!真白がそんなこと言うなんて!とうるさいガヤを無視しながら私は潤さんと目を合わせる。その表情はまじめで、しかもどうしてか、博人さんや発端である美咲さんまでどこか険しい表情をしていた。誰かと目を合わせるなんてことは最近ずっとやってきたはずなのに、その独特な雰囲気のせいで妙に緊張してしまう。ごくりとつばを飲み込む音が、どこかからかすかに聞こえてきた。
「うん、いいよ。そのほうが俺も助かる」
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