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、、、思えば、全ては繋がっていたのかもしれない。
そんなことを思うのは、だったなんて過去形でしか言えないのは。
そう考えること自体が、全てが過ぎ去ってしまった後にしかしないからだ。
例えばいつか逆方向に歩いたはずなのに、長い年月をかけてまた道が交わる。自分の年相応に表現するとするなら、街で知り合いと出会うことでさえ一つの偶然、奇跡といえるだろう。
、、、そんな簡単なことでも、些細なことでも構わない。
『ーーーちゃんが笑えるようなお話を作っていけばいいよ!』
そう言って差し出した手は、でも確か涙で濡れていた気がする。
泥にまみれた両手で草をわけたあの日。新品だったランドセルが、少しボロボロになってきたと感じたあの日。
…………彼女にさよならを告げた、忘れられない日。
いつかまた会えるから。そう無理やり笑ったのは、涙ぐむ彼女の笑顔が最後に見たかったからだろうか。それとも、そう思わないと自分の心がもたなかったからだろうか。今になってもまだ答えは出ていない。
「潤~!ご飯出来たわよ~!」
「ん……はーい」
その声にふと我にかえり、俺は握りしめていたペンを置く。真っ白なまま机の上に置かれた原稿用紙は、もう何日もこの状態のままだ。
…………この世界に、奇跡というものが存在するなら
もうすでに、それに触れているのかも知れない。だけどまだ、俺が望む奇跡には出会えていない。
無邪気に笑う顔も、悩んでいるときに尖らせる口元も。少し大人びただけであの時の面影は残っているのに、彼女はその時を覚えていない。なんとも皮肉なものだ。
「おっと……」
危ない。つい遠くのものばかりを見てしまって、未来へと続く階段を踏み外してしまいそうになる。いや、きっと俺はいつからか、歩くのをやめてしまったのかもしれない。
『だから……ずっと一緒だよ?真白ちゃん!』
小さい頃に指切りした約束。それをいつか思い出してくれるまで。本当の心を、見つけてくれるまで。
ーーー俺はずっと、物語を描き続ける。
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