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そう自分で自分を笑いながら、原稿用紙を少し奥に押し込む。もう、、、しばらくそんな感情はいらないから。
家を出て見慣れた道を歩いていく。いつもより早いからか道を行く人たちは少なく、これなら遅れずに済みそうだ。まったく、生徒会のメンバーが初日に遅刻など、いくらなんでも怒られてしまうからな、、
、、、と、
「(あれ、、あの子、、、)」
見慣れた制服が目に入って、思わず足を止める。今までこの電車に乗る生徒は見たことがないので、もしかして新入生の人だろうか。よくよく見るとリボンの色も緑色だし、線路図の前で困った顔をしているということは間違いないだろう。
でも乗り換えをするだけでここの電車はあまり複雑ではないし、色でしっかり分けられているからどれに乗ればいいのかなんて悩まなくてもいいはず。
そう思いながら声をかけるべきか考えていると、ようやく起き始めた頭にある言葉が浮かんできた。
『事故に巻き込まれて、色が見えなくなってしまったの』
、、、、、もしかして、あいつが真白か?
いやいやいや、引っ越すとはいっていたが偶然同じ地区にはならないだろう、とこめかみに手を当てながら足を止めると、後ろから歩いてきた人と肩がぶつかってしまう。そろそろ電車の時間だ。これから人が多くなってくるだろうし早く行かなければ。
そう思いながら、だがやはり困っている人を見たからにはそのままにしてはおけない。
それに、、、
フッ、、口元に笑みを浮かべながら、俺は再び足を動かした。相手が誰であろうと、その人だって自分というものは持っている。ならそれを知ることで、俺の知識も広がっていくことだろう。
だけどもし、この人が真白だったら、その時は、、、
過去にとらわれるのは、少しだけ休憩だ。今はただ、目の前のことだけを考えよう。
どうせいつか真白には会えるんだ、そうしたら、彼女の力になれればいい。
そうしたら、彼女の幸せだけ考えればいい。例え俺のことを、忘れていたとしても。
、、、でももし神様がいるのなら、願わくば少しだけ、自分の幸せを願わせてほしい。
だって主人公は、いつだってその物語の中心にいるんだから。
「あの、、、よかったら案内しましょうか?」
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