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誰かが言っていた。一年が進むのスピードは、その人の年齢と同じ早さだと。
なるほど、確かにその通りだと、私は白い息を吐き捨てながら実感する。
季節は巡り、夏の温もりを恋しく思うほど肌寒く感じてくるころに、私たちはいつもと違う場所に集まっていた。そこは単なる学校のグラウンドで、それでいて妙な緊張感に包まれている。厚着をして防寒はバッチリだというのに、なぜか震える手は止まらない。
「おっし……準備完了」
慌ただしく動いていた先輩たちが、ようやくその足を止めた。それと同時にいっそう緊張感が高まり、まるで耳元にあるかのように鼓動がはっきりと聞える。
前々から今日が本番だと知っていたはずなのに。やれることは全部やって、大丈夫だと確信したはずなのに。
目の前に組み立てられた機材は、夏の頃とは全然違う圧迫感を感じさせる。
とうとう………始まるのか。
「ほら、みんな集合~!」
今までバラバラになっていた部員たちが、一斉に集まってくる。その表情はみんな、真剣そのものだった。
「さて………じゃあ早速始めるか」
くしゃくしゃになった原稿用紙を手に取りながら、潤さんはそう口にした。部長らしく何も言わないのか……そう思ったが、恐らく言わなくても分かってるだろうと自己解決する。だってそのために、今日この日のために、みんなで準備してきたのだから。
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