第1章 色彩

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「あー……疲れたぁ……」 玄関につくなり、窮屈な靴を脱ぎ捨てて自室に直行する。朝にあれだけ憧れといっていた制服からなるべく早く着替え、お気に入りの動きやすいパーカーに袖を通す。今日はもう、学校に関することは考えたくなかった。 時計の針は、もう午後1時を指していた。お腹が空いているのを感じリビングに向かうと、なにやらソーセージが焼ける良い匂いがする。 母は仕事のためこの家には誰もいないはず……もしかして泥棒?泥棒が家でソーセージを焼いているのか!? 万が一に備え玄関に置いてあった靴べらを装備しダンジョン(リビング)の入り口に手をかざす。もし本当に泥棒だったら私ごときでは勝ち目がないのだが、ここで勇者(自称)である私が引くわけにはいかない。 平和を守るためには、誰かが戦わねばいけないのだ。 …………ちなみに、最近私は近くで買った転生ものの小説にハマっている。 「覚悟っっ!!」 そう言って扉を開けると、立て付けの良いスライド式の扉は勢い余ってこちらに戻ってくる。間一髪のところで腕を上げ直撃をまぬかれたが、なかなかのダメージを食らってしまった。 …………痛い。 「ちょっと何してるの?危ないんだから気を付けないとだめでしょう」 「あれ、お母さん今日は仕事じゃなかったの?」 「入学式なんだから休むに決まってるでしょう。人が多くて見つけられなかったけど、ちゃんと静かに座ってた?」 「え、ま……まぁ……」 なんでこう母親というものは的確に嫌なところを突いてくるのだろうか。椅子をガタンと鳴らしたの私ですなんて言えるわけもなく、目を反らしながら靴べらを置きに行った。
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