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「いやー、なんだかんだ順調な気がするね」
いつの間にか、部室には1年生しか残っていないかった。部活が終わった後に部室のカギを閉めるのが私の係となっていたためそれはいつものことなのだが、今日は終わる時間が決められていたこともあって特に早く感じる。
「そんなことないんじゃない?なんだかんだでもう一年も後半よ?」
そう言って優花が差した指の先には、窓いっぱいに広がる光の輪が見えた。みんなにはきっと、それがオレンジ色できれいなものに見えてるだろう。だが色の見えない私にとっては、ただの影を伸ばす悪者。落ちる夕日を見るだけで一日がもう終わってしまう気がして、なんだか少し嫌だった。
「、、、、あ!」
二人で外を見ていると、突然の大きな声に現実へ引き戻される。
まったく、せっかくセンチメンタルな雰囲気になっていたというのに、そんな感傷とは程遠い発言は予想外だ。そう思いながら声のしたほうに目を向けると、一人だけ準備が終わっていなかった恵が大きなカバンをひっくり返していた。
「、、、どうしたの?そんなに慌てて」
「今日友達からもらったものがあったんだけど、どこかに無くしちゃったみたい、、」
「ええ?それは可哀そう、、、、って、その中身じゃしょうがないと思ってしまうわね」
恵のカバンには相変わらず、ぱっと思い浮かぶ科目の教科書全てが入っていた。夏休みが終わり後期に入るにつれワークなどが増えたというのに、それまでちゃんと持ってきている。というか、今日なんて絶対持ってくる意味なかっただろう、、、。
そう思いながらも、大きなカバンの隅から教科書の間まで三人で一緒に探す。しかしとうとう見つからないまま、無慈悲にも時間だけが過ぎていった。
「えー全然見つからないよ?」
「おっかしいなー、、、確かに入れたはずなんだけど、、」
「本当に入れたの?間違っても、制服のポケットに入ってました~なんてオチはやめてよね」
「うーんそんなことは、、、あ」
「え、何まさか本当にあったの!?」
「ちがう違うそんなわけないじゃん!もしかしたら、教室の机の中に入れたかもって思って」
笑いながら頭を掻く恵に、私たちはため息を隠しもしなかった。結局今までの時間は何だったのか、そう思いながらも、同じ階にある教室に向かう。部室のカギも忘れずに閉めて。
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