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私もどちらかというとそちらに尽力していて、映画研究部では壁一面に大きなスクリーンで映像を映し出していた。といっても私は映像制作に関わらず、手伝いの名目でこっそり台本作りに専念していたのだが。
「ただ、、、どうだったのかなって気になって」
別に私だって、やろうと思えばクラスの出し物に参加することはできたのだ。そこで出すお菓子は実はお店で買ってきたものだから作れなくても心配ない。例え色が見えなくても、飾りつけならある程度工夫できる。接客は、、、、まあ何とかなっただろう!
それでも、私はそちらに携わることをしなかった。まるで私が、それから逃げているように。
高校に入って初めての文化祭の出し物が喫茶店とは、どんな因果だろうか。もう思い出すことはないかとさえ思っていたのに、あの時の記憶が嫌なくらい鮮明に蘇る。
結局あの後、私のクラスの出し物がどうなったのかはよく分からない。年が変わってクラスが変わるまで、それから一度も学校へ足を運んでいなかったから。
私の友達はちゃんと、笑顔で思い出を作ることが出来たのだろうか。みんな私を気遣うようにその話題を口にしないので、検討すらもつかない。
だから、学校の文化祭というものに関わっている自分が、どうしても想像できなかった。
「、、、、、じゃあさ」
恵が差し出した手には、一つの紙袋が入っていた。これが恵の言っていた探し物なのだろうか。中に何かが入っているということは膨らみでわかるのだが、それが一体何なのか。肝心の中身は、色づいた紙に包まれているせいで分からない。
「、、、これは?」
「思い出のおすそ分け。友達に頼んで取っておいてもらったんだ」
そう言いながら私に向けられた笑顔は、灰色の教室を白く染め上げた。恵のとった行動は直接色覚には関係のないはずなのに、そう見えるほど、明るさが映し出される。
「ほら開けて開けて!私もまだ中身見てないんだよねー」
「う、うん、、」
言われるがままに、丁寧に口を閉じている紐をほどく。その中には少しいびつな、でもそれでいてどこか温もりを感じる、手作り感あふれるクッキーが入っていた。
「わー、おいしそう!」
「これなんでか知らないけど人気だったらしいんだからね?ちゃんと味わって食べなさいよ!」
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