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「なんだ?やりたくなかったのか?」
「え、いやその、、、、やってもいいんですか?」
「、、、好きにしろ。ただし、進路が決まらないと嘆いてももう知らないからな」
そう言ってすぐに、先生は私たちに背中を向けた。
閉じられた扉の音と同時に、部室内が歓喜の声に包まれる。さっきまで何も話さなかった二年生は耳が壊れるほどの大声をあげて、三年生に至ってはガッツポーズまでして。
去年上映会が出来なかったことを知りもしない私は、むしろ今まで許可を取っていなかったことに驚く。多分恵や優花だって、いまいち状況が呑み込めていないのだろう。だが、みんなの笑顔が見れているということ、顧問にも認められ正式に活動に打ち込めることが嬉しくて、私たちは少し遠くからみんなのことを見守った。
「、、、、やっぱり、愛されてるなぁ、、」
私はただ一人、みんなに囲まれて笑っている潤さんを見ながらそう呟いた。誰にも聞こえてはいないだろうが、一番聞こえてほしい人が一番遠くにいるのがもどかしい。
潤さんは何より人との関わりを大事にしていて、そのため利益関係なく個人のことを尊重してくれる。
今までもそんなことがあって、そのたびに私は、潤さんに無理をさせていると思っていた。人より劣っている私を元気づけるために、時には自分の大事な時間を割いてまで。
でもそれが杞憂だったことに、今日の発言でようやく気付くことが出来た。
だからこそ一人ひとりとしてなんて言葉が出るのだろうし、私のことも気遣ってくれたのだろう。
そんな潤さんだからこそ私は信頼できたのだと思うし、こうして人望にも溢れている。
みんなに笑顔を向けられて、好かれている。
、、、だったら、私だって、、
「、、、好きになっても、いいのかな」
一度主張し始めた胸の高鳴りは、茜色が差し込んだ教室の中が空っぽになってもまだ、私の耳から離れなかった。
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