色彩 2

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色彩 2

一週間も経つ頃には、学校生活にも慣れてくるところがあった。 あの変に交差した駅構内も、学校の名物とまで言われている坂道も、今では心配なく通過できる。 新学期恒例の自己紹介や授業の流れの説明、係決めなどもスムーズに進み、中では本格的な勉強に入り始めた教科まであった。 そして何より、高校生というのはその人の人格が形成されある程度オープンになってしまう時期だ。明るい人はそのコミュニケーション能力を発揮し、おとなしい人は知識を伸ばす。そこに人見知りや状況と行った要素は含まれるにせよ、あまり自分から積極的ではない私は溢れものにならなかったのは奇跡に近かった。 「ちょっと真白(ましろ)聞いてよ~!さっきさ?優花(ゆうか)にめちゃくちゃバカにされたんだけど~」 「いやだって……(めぐ)は昔から恵だったんだなって…!」 「なにそれ誉めてないよね!?もー!!」 「え、なになにどうしたの?何の話?」 授業の終わりと昼休みの始まりを告げるチャイムが校内に鳴り響き、生徒たちの緊張の糸が切れる。 すでに教室にはグループなるものが存在しているようで、立ち上がって話をするもの、外に駆け出していくもの等様々だ。 そんな中で私は一人、背伸びをして机を動かす。少し時間をおいて来るであろう二人の場所を確保するためだ。 窓際で、近くに誰も集まらず外の景色が見える特等席。そこに集まって昼食を食べるのも、もう日課となっていた。 「さっきの時間さ?先生に『将来の夢を書いて提出することー』って言われたじゃん?」 「うん、確か今週中までだったっけ?」 「それでなんとなく優花に、『私、小さい頃にキリンさんになりたいって夢あったんだよねー』って言ったのね?」 「うん?」 なるほど…確かに恵は小さい頃から恵だったようだ。 校則ギリギリの長い髪と軽く止められたピン。恐らく「これから大きくなるから!」と少し大きいサイズの制服にしたのか、小柄な彼女は袖を少し捲っていた。 その袖を辿っていくと、胸の辺りに何か動物のバッジを付けている。動物が好きなのは分かるが、キリンになりたいという夢はなんなのだろうか。 文字通り人からキリンにジョブチェンジ(最近覚えた)したいのか、キリンのような大きな人になりたいという比喩表現なのか…… ………どちらにせよ、叶ってはいないようだ
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