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そう呟くと、真白はおもむろにペンを走らせた。
何かアイディアが浮かんだのだろう、手の動きはとどまることを知らず、さっきまで白紙だった紙に文字の羅列が出来上がっていく。
その様子を、俺は横からただ見ているだけだった。いや、それだけでも充分すぎるくらい、彼女が今ここにいることが奇跡だと今更ながらに思う。どれだけ時間がたっても、違えた道が必ず交わるとは限らない。彼女が物事にまじめに取り組むときの表情に、昔の面影を感じるのは容易だった。
「これでどうですか!」
勢いよく突き出された紙に書かれた文章は、たった一行しかなかった。それもずいぶんとシンプルな言葉で、最近世に出ているものではそちらのほうが珍しいくらいだ。
「本当にそれでいいの?」
「はい!これが一番、相手に通じるような気がするので!」
そう言いながら向けられた笑顔は、向日葵のように輝いていて。
ついその温もりに触れたいという感情に身を委ねてしまいそうになる。
結局俺は、真白のことが好きなんだ。
背丈が伸びてあの頃とは何もかもが変わっても、たとえ「普通」じゃなかったとしても。
真白が真白であることに変わりはない。真白という存在が、好きなことに変わりはない。
だからこそ、気持ちを伝えられないことがとてつもなく辛くて、痛いんだ。
「そっか、、、、」
感受を再び押し込むように、その言葉をはく。納得したようでその実不満ばかりの現状を、打開する方法は今はないのだから。
「そうですよ!あとは潤さんの演技力次第です」
「そうか、、じゃあ問題ないな」
「あー言いましたね?じゃあ今!ここで言ってみてくださいよ!」
「いやなんでだよ。別に練習しなくたって感情を込めて話すことくらい簡単にできるから。、、真白と違って」
「な、なんでそんなこと言うんですか!?あーもう怒りました!言ってくれるまで帰りませんからね!」
「まったく、、、」
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