感染支配

3/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
茶化すように俺が言うと、同僚は「やめてくれ、笑えない」と苦虫を噛み潰したような顔で小さく首を振った。 そして、そのまま立ち上がると一度部屋から出ていき、缶コーヒーを二本手にして戻ってきた。 「ほれ」 「おお、サンキュー」 そのうちの一本を俺に投げてよこして、同僚は自分のコーヒーに口をつけた。 「……そうだ、高田(たかだ)。お前さ、意識を乗っ取るウィルスの噂、聞いたことあるか?」 「は? ウィルス? インフルエンザみたいなやつか?」 自分もいただこうと、プルトップを開けてコーヒーを口に運びかけていた俺は、突然振られた問いかけにピタリと動きを止める。 「いや、違う。そっちのウィルスじゃなくて、コンピューターウィルスの方。その反応だと、知らなさそうだな。パソコンじゃなくて、そのパソコンを操作する人間の意識に干渉(かんしょう)して支配する、新種のウィルスの噂」 「……はぁ?」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!