第1章   トアン

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ロストークの南西部。 なだらかな山々が連なる地域だ。その西には森、北には草原が広がっている。 草原と山岳地帯の境目に、一軒だけぽつんと丸太小屋が建っている。 ピアリの父親、ローエンの小屋だ。 屋根裏部屋を含めて、部屋は3つしか無い。その内の1つは化学や生物学の実験室のようになっている。 かつて、ローエンの師ヴァシュロークが魔法医学の研究に使っていた部屋だ。 ヴァシュロークが亡くなってからは、ローエンが意志を引き継ぎ、病に罹った魔法使いの治療や、魔法薬の開発に(いそ)しんでいた。 彼も優秀な魔法医なのだ。 そんなローエンの元で魔法医学を学んでいる若者がいた。 名をトアンという。 赤っぽい茶色の髪と瞳。素朴で真面目な印象の少年だ。 2ヶ月程前、レダリアという国で、セレの仲間を襲った刺客の1人だ。 レダリアの第2王子シュデルに命じられ、セレが泊まっていた宿に押し入ったのだが、たまたまそこにいたタリヤに捕らえられた。 ロストーク国王の側近であるタリヤは、国王の兄であるセレを捜しに来ていたのだった。 セレは、トアンが魔法医を目指す善良な少年だと知り、ロストークで学ぶ事を勧めた。
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