1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
気持ち悪いでしょう?
40に近い男が、まだ中学生だった私を死後婚の相手にするために自分で死んだの。
15歳だった私にとって、5年間だけでもこんな男の妻として扱われるなんて耐えられなかった。
だから地元の子が誰も行かない高校を選んで、こっそり彼氏を作った。
古い風習のタブーを破ることなんて怖くはなかったし、ささやかな抵抗をしたいという気持ちもあった。
でも彼氏ができた日の夜から、身の周りでおかしなことが起こり始めるようになった。
夜中に家の周りを何かが這い回るような音や唸声が聞こえたり、名前を呼ばれた気がして振り返っても誰も居なかったり。そういうことが日に日に増えていったの。
怖くなってその彼とはすぐに別れた。
そうすればこの現象も収まると思ったから。でもそうはならなかった。
最初は空耳みたいだった声もだんだん鮮明になって、1年経つ頃にはあの男の声だとはっきりわかるくらいになった。
這い回る音は私の部屋のすぐ前で聞こえるようになって、夢にまで男が現れはじめた。
それが毎日続くの。それも日を追うごとにひどくなる。気が狂いそうだった。
追い詰められて精神的に参ってきて、とにかくこの風習がない土地に逃げたい、ここから離れればきっと開放されると思うようになった。死後婚の2つ目のタブーのことは頭にあったけど、今より悪いことが起こるなんて想像もつかなかった。
私は誰にも言わずに県外で就職活動をして、高校卒業と同時に最低限の荷物だけ持って家を出た。
新しい町、新しい生活。誰も私のことをあの男の妻として扱わない場所で暮らし始めて、おかしな現象は嘘のように収まった。
そのまま何事もなく、「5年間」の最終日である20歳の誕生日の夜を迎えた。
この日が何事もなく終わることで、本当の意味で私は解放される。そう思いながらまどろんでいると、もう2年近く聞いていなかったあの男の声が、耳元で聞こえた。
「レイちゃんは僕のお嫁さんだよ」
叫びたかったのに声が出なかった。
逃げたかったのに体が動かなかった。
「やっと見つけた。ここには結界がないからレイちゃんに触れるよ」
何も見えないのに、何かに体を触られるような感覚。
夢か現実かもわからない中で、あの男が私にのしかかっていた。
最初のコメントを投稿しよう!