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優しい声でそう言うと、朱音先輩は私の頭をぐいっと胸に寄せ、耳と心臓を密着させる。
「……聞こえるでしょ? 私の音。これは、あおちゃんの温もりを感じてたから。だから、こんなふうになっちゃうんだよ」
「……でも、冷たくないですか?」
「そんなあおちゃんの冷たい温もりも、心地いいんだもん」
「なんですかそれ。矛盾してますよ」
「あっ、やっと笑ってくれた。こういうときこそ笑ってなきゃいけないんだよ。だって『女の子の日』だもん! ほら、女の子らしく笑って?」
「私、笑顔とか苦手ですから」
「む、冷たいなぁあおちゃんは」
「冷たいぬくもりをお届けするのが私ですから」
「よーし、じゃああたしはこの熱いぬくもりで溶かしちゃうぞ~?」
「望むところです」
ずっと私を悩ませていた『痛み』は、案外悪い奴じゃないのかもしれない。
私と朱音先輩を近づけ、そして気づかせてくれた。
多分、私の言っていたことも、朱音先輩の言っていたことも、間違いなんかじゃないんだと思う。
私たちは正反対。何もかもが違う。
だけど、私たちは混ざりやすい。
正反対のぬくもりを感じて、混ざって、違う色に変わりながら、私たちは似た者同士になっていくのかもしれない。
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