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陸上部の中でも全然成績を残せない、こんな日陰な私にもちゃんと声をかけてくれる。性格も実力もパーフェクトな、私とはまったくの正反対の人。
「それより朱音、今日は練習してくんでしょ? 折角なら後輩の指導もお願いしたいんだけど」
「ああ、うん。もともとそのつもりだったし、手伝わせてもらうよ」
「私たちも見てもらっていい?」
「うん。でも先に後輩たちからね?」
「オッケー、それじゃあお願いね!」
「じゃあ着替えてから行くから、また後で」
「はーい。鳩原も早く着替えちゃいなよ」
「はい」
そうして、ぞろぞろと朱音先輩を除く先輩たちが運動場へと向かっていき、部室内は私と朱音先輩だけになってしまった。
これと言って会話もなく、するすると衣擦れの音だけが響く。
「……朱音先輩」
「ん? どうしたの?」
スカートのファスナーに手をかけたところで、静かな空気に耐え切れず、朱音先輩に声をかけてしまった。
「全国大会優勝、おめでとうございます」
そんな空気を少しでも緩和させようと、月並みな言葉をかける。
「うん、ありがと。あおちゃんも一緒に頑張ろうね!」
「まあ、できる限りは頑張ります」
ほんとにこの先輩は……どれだけ人ができてるんだろうか。小さな大会にすら入賞しない私に対して、一緒に頑張ろうなんて。
すべてが、私とは違う。
「……っ」
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