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私の目の前には、いるはずのない朱音先輩が立っている。
「朱音先輩……指導中だったんじゃないですか……?」
「そうだけど、あおちゃんがフラフラしてるんだもん。心配になるに決まってるでしょ!」
「私なんかを気にしなくたっていいですよ。さ、行ってください」
発する言葉とは裏腹に、色んな気持ちがぐるぐると混ざる。
嬉しい。
悔しい。
悲しい。
そんな心は、また体とリンクする。
「うっ……!」
「あおちゃん!」
朱音先輩が来てくれて、嬉しいはずなのに。なんで、こんなにも悔しくて悲しいんだろう。
私がもっと上手かったら、たくさん一緒にいられたのに。
私がこんなに重い症状じゃなかったら、心配されなくて済んだのに。
私がこんなふうじゃなかったら、朱音先輩にもっと近づけたのに。
私と朱音先輩は、正反対だ。
色々な気持ちがこみあげてきて、仕舞いには。
「なんで……なんでっ! 私なんかに構うんですか!」
視界が滲む。抑えられない何かが溢れる。
「あおちゃん……もしかして」
お腹や腰を痛がる仕草、肌の調子、精神の不安定さ。そういうところから、多分朱音先輩は見抜いてしまったのだろう。
「本当に、私と朱音先輩は正反対なんです。似ているなんて、嘘なんです」
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