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初めて朱音先輩と会ったとき、私たちは似ていると言ってくれた。
それは、私が落とした学生証を朱音先輩が拾ってくれたことから始まった。
私の名前、碧音と、先輩の名前である朱音。朱音先輩は似ていると言ってくれた。
でも、碧と朱は限りなく遠い、正反対のものなんだ。
私たちは、相容れない。
それなのに、朱音先輩はそれでも否定する。
「ううん。やっぱり、あたし達は似てると思う」
そう言って、朱音先輩は私の手を取ってくる。
「あんまり座ってばっかりも良くないよ。痛いときって、実は立ってたほうが楽な時もあるしね」
手を軽く握り、朱音先輩は私を自分の体に引き寄せ、ぎゅっと抱きしめてくる。
「えっ、ちょ、朱音先輩……!?」
唐突な出来事に狼狽えることしかできず、心臓の鼓動だけが早くなる。
痛みなんかどうでも良くなるくらいの出来事が、ゼロ距離で行われる。
「ほら、こういうときって温めたほうがいいでしょ? だから……ね?」
それらしい理由を朱音先輩は語るが、なんか方向性が間違ってる気がする。
「温めるっていうか……熱すぎです」
「あはは、さっきまで走ってたからね。離れたほうがいいかな?」
「いえ……もうちょっと、このままがいいです」
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