1 骨董機巧技師と敏腕執事

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「妙な話ですね。人間は記憶力が悪い生き物ですが、リルの場合はひどすぎる……急に仕事を辞めると言うし……あぁ、もしかして、一人になったことが原因なのですか」  彼の(コンピューター)の方が回転が速かった。ジョルジュの指摘に、リルは「あっ」と手を打つ。 「そうかもしれない!」 「ふむ。それは困りましたね」  ジョルジュは顎に手を当てて困った素振りを見せる。 「何せ、リルはもう一人だけ(、、、、)ですし……私としては呼び名に困らなくて済むのですが……」 「おいおい、失礼なことを言うね。私は私であって、あの子でもあるんだけれど」 「先程まで忘れていたくせに」  意地悪な言動だが、相手は機巧なので仕方ない。  何も返せずにいると、ジョルジュは自動的かつ義務的に予報時計を再び見やった。 「あと数分――6分30秒ほどでノエルが来ます。その時に相談されてはいかがですか」 「相談?」 「はい。元はと言えば、あの革命でリルの意識や体が分裂したのですから、アフターケアをお願いしましょう。なんなら人員も増やしてもらいましょう」  その淡々とした提案に、リルはなんとなく頷いた。そして、首をかしげる。  アフターケアや増員なんかされては、やはり仕事をしなくてはいけないじゃないか。これじゃあ隠居も遠のいてしまう。そのためには、今から来るであろうノエルを追い払うことが先決。     
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