第1章出会い、そして入園  4

2/2
前へ
/69ページ
次へ
当時の僕たちは坊っちゃん刈りであった。坊ちゃん刈りというのは、まず首の方のうしろは耳の線くらいまできれいに刈り上げ、サイドも刈り上げ、もみあげもまっすぐに、そして前髪は右から左に向かってまっすぐにハサミを入れる。よく言われるオカッパ頭である。この髪型はトリイの3人の誰が刈ってもほぼ同じであった。トリイのおいさんは、僕の髪を切りながら「いつも思うけどタケちゃんの髪は、硬くてきれいやね。髪は大事にせなあかんよー」と一本の髪もないおいさんは口癖のように言う。「僕ね、今度から幼稚園いくことになったんや。さとる君とかずちゃんもいっしょやでー。ええやろー。おいさん。」「ほんまかん。おめでとう。良かったね。おいさんも幼稚園行きたいよー。」「あかんでー。髪の毛なかったらあかんねでー。大人はあかんねでー」「あっははは、大人はあかんなー。髪の毛もなかったらあかんのかー。残念やなぁ」なんでか分からんが、お兄さんと、お姉ちゃんはクスクス笑っている。「はい、男前になったでー。」「おいさん、ありがとう。今度おいさん幼稚園に入れるように先生にたのんだるさか、髪の毛伸ばしときなあよー。じぁねー。」「タケちゃん、おおきによー。おいさん、髪の毛のばしとくわー。」なんでか分からんが、今度はお姉ちゃんも、おにいちゃんもゲラゲラ笑っていた。「ただいまー。」「タケちゃん格好良うなったやん」おかあちゃんに言われうれしかった。3日後、きれいに着飾ったお母ちゃんに連れられ、黄色の通園帽と緑色の通園バックを肩からかけてタケちゃん坊ちゃんは、勝浦幼稚園の門をくぐったのである。    つづく。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加