1人が本棚に入れています
本棚に追加
まぐろ船を新しく造船した時も桟橋に停めたマグロ船の上から陸に向けて餅堀りをおこなう。紅白の餅や中にはお金の入った餅もあった。今もいるが、餅堀り命のおばちゃん、おっちゃんが、うじょうじょおり定刻通りに桟橋に集まってくる。一種の戦場である。僕はこの日も大きな前掛けをした、おかあちゃんといっしょに歩いて3分の戦場、いやいや桟橋に向かったのである。色鮮やかなたくさんの大漁旗のはためく真新しいマグロ船の前に戦士たちは陣取り正午のサイレンとともに餅堀りが始まった。前掛けをしたおばちゃんたちが、吠える。「おいさーん、こっちやでー。こっちほらな後で怖いでー。」一種の脅迫である。餅堀り役のおっちゃんたちもおばちゃんたちの怖さ知ってるので上手に均等に餅を掘る。プロのおっちゃんもおばちゃんも自分の陣地からは決して動かない。下手な人ほどあっち行ったりこっち行ったりする。おばちゃんたちは拾うというか、自分の陣地に落ちたもちは、かき集めるのである。横から取ろうものなら噛みつかれる。(いやいや、ものすごい目でにらまれる。)約10分の戦いが終わった。おばちゃんやおっちゃんたちも満足そうな顔している。「あっ、ふーちゃん、こんにちは。あっタケちゃんも来たあたんかん。ほれ、かずちゃん、挨拶せんかん。」「おばちゃん、こんにちは。僕、和男です」おばちゃんは知っていたのだが、つまり和男くん(かずちゃん、のちのタコちゃん)と僕はこの時初めて会った。「かしこいねー。かずちゃんやね。おばさん何回かおうたあるよ。この子はたけしや。なかようしたってよー。ほら、かずちゃんに挨拶せんかん。」「たけしです。また、遊んでよ」と僕。結構照れ屋なんである。前からもう一人おばちゃんが来た。「ふーちゃん、みーちゃん、どうねー。いっぱいとったかん。あっ、タケちゃんとかずちゃんこんにちはー。」
最初のコメントを投稿しよう!