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おやじが部屋に入ってきた。
「おぅ、智史、これどうだ?」
そう言って俺に渡してきた。
……弓矢を。
どこで買ってきたんだ。これ絶対ドンキだろ。700円の値札ついてるんだけど。
「お兄ちゃん!ちゃんと狙ってね!」
何故かルーレットが回っている。なんでもありだな。いいよ。射つよ。ほれ。
俺が射った矢は的を外れ、窓の隙間から外に消えていった。
「お兄ちゃんが射ったんだから自分で拾って来てよね」
え、なんでそういうところ厳しいの?仕方ないから弓を拾いに外へ出た。
弓、弓。あったあった。俺なにしてんだろ。
そこへサラリーマン風の一人の男性が現れた。その男性は俺の姿に驚いた。まぁ、普通そうだよな。
「う、うわぁ。ミノタウロスだぁ。」
それ、頭が牛のヤツな。
するとあちらこちらで声が上がり出した。
「ミノタウロスだってよ。」
「うわー、リアルミノタウロスかよ。きもっ」
「あ、保健所ですか?ミノタウロスが歩いてるんですけど。」
だからケンタウロスだって。保健所呼ぶ前に警察呼べよ。
しかし、さすがに冬だと寒いな。上半身裸だしな。いや、全身か。大丈夫かな、公然ワイセツ罪とかならないかな。
ふと斜め下に目をやると小さな少女がじっと俺を見ている。よくわからんが3歳か4歳くらいかな。
「乗りたい。乗せて。」
こら、俺はデパートの屋上にある100円で動く乗り物じゃないぞ。すげー俺の前足にしがみついてくる。そのうち泣くね。絶対泣くわー。
仕方ないから女の子を抱えあげ馬部分に乗せてあげた。
誰かが叫ぶ。
「女の子がミノタウロスに悪戯されそうだぞ」
そう思うなら助けてやれ。そしてケンタウロスな。女の子はキャッキャいいながら馬部の上でおおはしゃぎだ。
「お馬さん、温かーい」
「気のせいだ。馬の体温はさほど人と変わらん。お前の体が冷たいだけだ。」
ドン引きする女の子。
「さおり!」
そう叫びながら一人の女性が近寄り女の子を抱え上げた。
あー、母親かな。なんて面倒な。母親は女の子を地面に降ろすと機関銃のように捲し立ててくる。もう俺にはこの母親がなんていっているのか聞く耳を持たないようにした。
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