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あれ?俺はさっきの女の子を探した。何処にいったんだろう。
いた。
女の子はガッツリ信号無視で横断歩道を歩く。おいおい、何してんだよ。俺は猛ダッシュで走る。
蹄の音がうるさいが流石に馬だ。速い。
すぐに女の子を抱えあげ歩道に戻り降ろした。
「ったく。あぶな、、、」
激しい衝撃が走り俺は空中に飛ばされた。
あ、馬の部分が道路に出てたわ。こりゃ、また入院かな。吹っ飛ばされながら俺は女の子の姿と安全を確認していたがその先の記憶はない。
目が覚めそうだ。どこからか水が滴る音が聞こえる。
勘弁して欲しい。また下半身がなくなったのか。もうしばらく目を閉じていよう。俺はまた眠りについた。
「あれはさすがにないんじゃない?」
晴海の声だ。
「何言ってんだい、嬢ちゃんありゃ上物だぞ」
嫌な予感しかしない。そっと目を開くと。
そこには人魚の俺がいた。
言葉が出ない。つか、これマグロだろ。どうりで晴海の横に市場のおっさんがいるわけだ。今の医学って凄いのはわかったから、頼む、人の下半身を俺にくれ。
俺の尾ひれが水を弾いていた。晴海は医者に文句を言っている。ケンタウロスの時はバカにしてたが今回はさすがにダメだと思ったのだろう。そうだ、やり直しさせるんだ。
「あれじゃ、魚臭くて家に入れれない!私の服とか全部魚の臭いが付きそうで嫌よ!学校で魚臭い女って苛められたらどうするのよ!」
そこ?
もう一人、部屋の隅に女の子がいる。俺が助けた女の子か。女の子が近寄ってきた。
「食べたい」
女の子の手には醤油の入った小皿と箸。
俺は見えてないのかい?そりゃ本マグロっぽいけどさ、一応生きてるんですけど。
「こら、さおり!まだでしょ、お行儀が悪いわよ。」
おい母親。お前の性格が行儀悪いわ。
あれから半年。
結局、晴海の要望が通りマグロは免れた。取り外したマグロはスタッフが美味しく頂きました。
話し合った結果、機械で下半身を作ることになった。それにはそれなりのコストがかかるらしい。お金が貯まるまで製作は保留となった。
父親が言った。
「暫くはこれで。」
それから今に至る。
日課の時間だ。充電器から外れて動き出す。
俺は今、掃除機ロボットの冷たいル◯バの上に置いてある。
静寂の中で機械音だけが鳴り響き、俺は遊園地のコーヒーカップを毎日思い出すのであった。
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