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「えー、とちょっと意味が…」
「薬剤師の資格がない人が調合した薬を受け取って飲む?」
「……え、あ、いや飲まないかな?」
普通に飲まないだろ、働け僕の頭。
「そういうことなの」
「どういうことだよ」
間髪入れつずに聞き返した僕に、今度は塚原が首を傾げた。
可愛いな、くそ。
…いやダメだ。
全くもって理解が追いつかない。
追いつかないどころか、正直、これっぽちも理解できない。
ちよっと気になっていた塚原が途端に謎の生物に見えてきた。
何故これでわからないとでも言うように塚原は顔を顰め、大きくため息をついた。
いや、溜息をつきたいのも、よく分からない会話の内容に顔を顰めたいのは僕の方だ。
けれど、あまりに塚原が残念そうな顔をするものだから...。
「なんか、ごめん」
「...いいえ、...そう、分からないの...」
途端に沸きあがる罪悪感。
...あれ、待って、これ、僕が悪いのか?
なにも、悪い要素なんてないだろう。
僕の頭の中で繰り広げられる自問自答は当然塚原には聞こえていない訳で、塚原は再度説明するように語り出す。
「免許なの。魔女って資格なの。医者も薬剤師も、自動車の運転も、試験を受けて免許を取得するでしょ?それと一緒よ。
私まだ受かってないの。魔女って名乗るために免許を取得しなくてはいけなくて、その試験を受ける対策を今、してるの」
分かる?と言って僕の前に突き出してきたのはいつも塚原が持ち歩いている分厚い本だった。なにか難しい文学的な本なのだと思っていた時期が…僕にもありました。
題は「魔女試験対策テキスト」
そのままじゃねーか。
「現代社会は信用がものを言うのよ。おばあちゃん達の頃は免許なんてなくて、こじんまり、ひっそり、口伝えでだったらしいのだけれど、今はレシピもデータ化されてるし、腕のいい魔女はやっぱり顧客も多い。何より、協会に認められたっていう免許を早いうちに持ってると就職に有利!」
拳を握り、力説している所、悪いのだが...。
魔女って免許が一体どこの就職に有利なんだろうか。協会とか顧客とかツッコミどころ満載な会話に思わず、遠いところを見つめた。これ以上突っ込んではいけないと、僕の中で警鐘が鳴っている。
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