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なぜかあたたかいココアを飲みながら、わたしはキッチンに向かう。
廊下は静かだ。
お父さんもお母さんもお兄ちゃんも隆太も、自分の部屋に戻って寝ているんだろう。
うちのココアは、スーパーとかでよく売ってる、1杯分ずつスティック状に個包装されている、お湯で溶かす粉末のやつだ。
5本で1箱。
さて、これを飲み終わったらもう一杯いれますか、と、いつもココアがある棚の上をガサゴソと探る。
けど、そこにはココアはなかった。
あれ、3時間前にいれた時には、わたしが5本入りの箱を開けたところだったのに。
おかしい。
基本的には、うちの家族でココアを飲むのはわたしだけだ。
お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、お茶の時にはコーヒーを飲む。
最近は弟の隆太までも生意気なことに背伸びをして、コーヒーを飲んでいる。
とはいえ、牛乳をたっぷり入れたカフェオレだけど。
わたしもコーヒーは好きだけど、受験生になってから飲むのを控えている。
寝るべき時に寝付けなくなっちゃうのはダメだ、とお兄ちゃんに止められたからだ。
ステンレスの流しを見ると、マグカップが3つ。
ゴミ箱を見ると、スティックのゴミが5つと、それが入っていたはずの箱が丁寧に畳まれて1つ捨てられている。
わたしが寝ている間に、我が家で空前のココアブームでもあったのだろうか。
おかしいなあ、と思いながら、寝ぼけた頭の体操がわりに、わたしはちょいと推理をしてみることにした。
『なぜ、わたしのココアは冷めなかったのだろうか?』
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