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「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということわざがある。
なにごとも、やり過ぎは良くないという話だ。
それに反して、妹は勉強を頑張り過ぎている。
まあ、２年前までは僕も受験生だったわけだし、焦る気持ちはわからないではない。
ただ、それにしても、
「１日１１時間勉強するんだ」
などと言って、いつもストップウォッチを片手に、勉強している時間を計っているその姿は病的と言わざるを得ない。
そもそも、勉強の量とは、時間の量に比例するものではない。
例えば、テキストを１分に１文字ずつ読んだ１時間と、１秒に１文字ずつ読んだ１時間。
同じように「勉強した１時間」としてカウントされたとしても、その勉強量は後者の方が６０倍になる。
つまり、集中力が欠けた状態でいくら時間をかけようと、短時間で集中しているやつには勝てないのだ。
だが、そこらへんのことをいくら伝えても、妹は納得しない。
『まわりが１０時間やるなら私は１１時間やるんだ。１日１時間ずつ差をつける。だから、私が１時間以上寝ていたら起こしてね』
と生意気にも僕に頼んできた。
でも、寝るべき時は、寝なくてはいけないものだ。
コーヒーを飲んで夜中までやろうとする妹に対して、受験生の先輩として、僕は告げた。
「コーヒーはやめて、ココアにしろ」
ココアは、リラックスもするし、糖分も補給できて良い。
妹は、その言いつけについてはずいぶん素直に聞いていた。
「まあ、お兄ちゃんはそれで私の行きたい大学に受かったわけだし......」
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