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「おい、イチロー、もし明日死ぬとなったらどうする?」
スタジオ帰りに寄ったオープンテラスのカフェでベースのケントが口を開く。
「いきなり言われてもな」
「俺はマキに告るぞ!」
そうケントが口にしたマキとはこのカフェのウエイトレスのことで、ストレートでサラサラのショートカット、細身の体に目鼻立ちが整い、おまけに愛想が良いので正にモテそうな女性だ。
「おいおい、なんなら今告れよ」
「いや、まだ早い。まっ、まだ、まともに話したことすらないぞ」
「お前、地球最後の日に告ったら、すぐに一緒に死んで終わりだぞ」
「うるせえな!じゃあアキラは?」ケントは逃げ場のない状況に慌てて話をアキラに振った。
「俺?俺はみっちゃんと一緒にいるよ」
「でたー、緑子!緑子って・・・」
「はは、好きに言ってろ。俺には最愛で最高の女なんだ。で、イチローは?」
「そうだな、バイクに寄りかかりながら夕日を見てギター弾けていたらそれでいいかな」
「かーっ、寂しー」先程のお返しとばかりに、ケントがイチローの意見に水を差した。
「そうかな」
「そうだよ、全っ然、分かってねえ」
「そうかな」
「そうだって!そうなって初めて分かって、さみちーって泣くタイプだよお前は」
「まっ、色々だよ」アキラがそう言うと、皆は顔を見合わせて微笑み合った。
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