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「ミナト、聞こえる?」
『……うん』
あなたは私がいない所に顔を向ける。
『……気付い……ことが……あ……』
「なに?」
『この宇宙は……孤独で……冷……い』
「寒い?」
『すご……さ……い』
「……ごめんね」
『どう……て?』
「なんでもない」
「手、出して」
私がそう言うと、あなたは手を差し出した。青い輝線だけで描かれた、色のないあなたの手。
そのぬり絵のような手に、私はそっと手を重ねる。
干渉し合う私とあなたの手。青い光で描くように、肌色で塗るように。
ほのかに、私の手が温かくなる。
それは励起光でもたらされるだけの、人工的な暖かさ。それでも今この瞬間だけは、数百光年の彼方から届けられた、あなたの体温。
『手……繋い……る?』
「わかる?」
『あた……かい……』
「ミナトは何も感じないでしょ?」
『でも……しば……く、このまま……』
「うん、わかった」
私の周りではまだたくさんの人が慌ただしくしている。早くどかないと、迷惑になってしまうだろう。
でも、この暖かさを忘れないようにしたい。あなたが帰ってくるその日まで、このぬくもりが残り続けるように。
あとちょっと手を繋いでいよう。
もう少し。
もう、少しだけ。
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