青いぬり絵をあたためて

4/10
前へ
/10ページ
次へ
 部屋の自動ドアが開き、スーツ姿の女性が入ってきた。 「間もなく時間です」  女性はそれだけ言うと、すぐに出ていく。 「待ってコザコリさん!」  私は慌てて女性を、当のなんとか宇宙開発機構職員コザコリ・サワタを追いかけた。  ーー端的に言って、人類が光の速さを超えることは不可能です。320光年離れているのなら、光が到達するまで320年は必要で、そこへ人が向かうとなればさらに長い時間が不可欠。それでも人類は、地球系外惑星、遥か彼方の大地と繋がることを夢見続けました。やがて人類は速く移動することを諦め、かかる時間そのものを短くすることに活路を見出したのですーー  曲がりくねった廊下はやがて広いホールに繋がり、そして見上げるほど巨大な扉で視界が埋め尽くされる。その扉の端っこ、通路用の戸でコザコリさんが待っていた。  手招きされるまま、私は扉の中に入る。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加