青いぬり絵をあたためて

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「おはようございます、タニシべさん。早速ですが状況報告を」 『概ね良好です。コールドスリープは問題なく起動中、軌道も計画通り推移しています。ただ、少し船内が寒いですかね』 「次元擦過の反動でしょうか。念のため循環設備の点検をお願いします」 『了解』  業務連絡がやり取りされる中、私はミナトの顔をじっと見ていた。  最後に地球で見送った時と、同じ顔。  あの時のミナトは冒険を前にした少年のようで、私と離れ離れになることなど気にもとめていないかのようだった。  ……それから、何一つ変わらない。  これは一方的な通信で、向こうからこちらは見えていないらしい。この場に私がいることは、ミナトは資料として知っているかもしれない。けれど、私が実際にどこにいて、どんな顔でミナトを見ているのかは、彼にはわからない。  これから1ヶ月間、ミナトは通信しながら任務をこなし、次の潜水の準備を行う。  その間、私はどんな顔をして声をかければいいのだろう。  再会できるのなんて、もっともっと後になってからなのに。  一瞬、ミナトと目があった気がした。  私は、目を逸らした。
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