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恋愛小説の新ジャンルを開拓してみました
…――王道の殻をぶち破るまったく新しい王道恋愛物語が開幕。
恋愛の新ジャンル、ここに爆誕ッ!
その名も『愛とAI』。
……などという煽り文句が表紙に付けられた帯に躍る恋愛小説が目に入る。馴染みの書店で平積みにされていたのだ。ひときわ目立つ場所に平積みされていたのだから、書店おすすめの作品であり、それなりに面白いのだろう。
ただ『愛とAI』なんて題名からしてありがちだし。
全米が泣いただとか、これは革命的な物語などといった煽り文句は正直胡散臭い。
もちろん。
『新ジャンル、ここに爆誕』なんて煽り文句も同じようなもんだ。
胡散臭さしか感じない。
僕は財布を取り出し、いくら入っていたかを確認する。2冊は買えるだけの余裕がある事が分かる。しかしながらこの新ジャンルな恋愛小説を買うわけがない。今日、書店に来たのはとある学術書を買う為なのだから。人類の神秘に迫る崇高なる学問の書。
こう書くと新ジャンルな恋愛小説という煽り文句にも近いものを感じるが。
新ジャンルな恋愛小説なんて低俗なものと一緒にしてもらっては不本意だ。
僕が欲しい学術書は、人類史においてこの上なく静謐な世界で行われる神秘さと妖艶さが合わさった人間の本能からの儀式を解き明かす為の書である。すなわち人間のノーブルさと高邁なミステリーを追求する為の学術書といえば分かり易いだろうか。
余計に分かり難いとは言わないで欲しい。
敢えてでやってる。
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