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僕は無言で……。
あの新ジャンルな恋愛小説なるものを手に取る。
実を言えばそれはなんでも良かった。今、手に取った新ジャンルな恋愛小説でなくても良かったのだ。だが、書店を訪れ、まず一番最初に目に付いて気になったのがこの新ジャンルな恋愛小説だった。だから手に取っただけにすぎない。
加えて、僕が求めて止まなかった学術書のあった場所から置いてある場所も近かった。
それだけの事でしかない。
そうして学術書を隠すように新ジャンルな恋愛小説を上に重ねる。
これで可愛いあの子にはバレずに済む。
鈴蘭のようなあの子にだ。
そうほくそ笑みながらレジに向かう僕。
そして。
無事にレジへと辿り着く。
僕は人生においての成功者となったような気分になる。この世の全てを手に入れ、自由と博愛さえも、そして尊き愛さえも手中に収めた気になる。美しき可憐な鈴蘭を思わせる可愛いあの子へと視線を移し親指を立てる。誇らしくも成し遂げたとばかりに。
今朝、念入りに磨いた歯を煌めかせて。
彼女は微笑んでくれた。
これで全てが終わったんだ。僕は全てに勝利したんだと一人涙を流す。
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