恋愛小説の新ジャンルを開拓してみました

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 学術書とは男女が夜に行う愛の営みを解き明かす為の問題集さ。  一人悲しく右手のお供になるそれさ。  僕は膝から崩れ落ちた。  そして泣いた。  もう真っ白な灰になっちまったよと。  刹那。  少し離れた場所にいた可憐なる鈴蘭の香りを放つ、あの美少女が近づいてくる。  まるで天使を思い起こさせるアルカイックスマイルを浮かべ。 「それ、私も愛読書なんです」  急転直下ッ!?  その瞬間、僕はこの世の誰よりも幸せになった。  天使の吹くラッパが耳に届き、笑点でネタにされる僕から天国へと昇天する僕になった。そうして、あんなにも小憎らしかったレジ打ちのモブが頼もしくも見えた。彼こそ僕らの愛のキューピッドなのだという事実を思い知らされたのだ。  レジ打ちのモブがにこやかに微笑んだ。 「お幸せにッ」  と。  こうして僕らの横道なる愛の物語が始まったのだ。そうして。
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