2人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
……ううむ。
恋愛小説の新ジャンルを打ち立てるべく小説を書き上げる事のできる人工知能を組み上げてはみたはいいがどうも失敗のようだ。試しに恋愛小説を書かせてみればリアリティの欠片もない横道な恋愛小説が出来上がってしまった。唸るしかない。
やはり人工知能には心がないからなのであろうか。
心の機微を丁寧に織り込む恋愛小説はAIにはハードルが高いのかもしれないな。
今、AIに書かせた愛の物語はむしろギャグ作品とも言えるからな。
再考の余地ありと。
メモ用紙へと残念な結果を書き込む。
やはりAIが書く恋愛小説という新ジャンルを打ち立てるまでにはまだまだ時間がかかる様だ。しかしながら必ずやAIが書く恋愛小説という新ジャンルを立ち上げてみせる。それこそが『愛とAI』を手に入れた僕の使命なんだ。天命なんだ。
僕はそう覚悟を決め、机の上に置かれた本を見つめる。
僕が、若かりし頃、恋愛の行き着く先を探求した学術書を求めた時に偶然手に入れた本だ。この本は僕らにとって、とても大事なもの。この本があったからこそ僕は愛をAIに表現させる道へと踏み出す事ができたのだから。
そうして、この本により童貞を無事に卒業できた初老のエンジニアが笑った。
この本があそこにあったからこそ僕らは……。
彼はゆっくりと振り返る。
その視線の先には鈴蘭を思わせる初老の女性が微笑んでいた。
おちまい。
最初のコメントを投稿しよう!