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その後も、思い切り過保護な両親、叔父やその恋人から、折に触れて興味深いペーパーバックを進呈された。しかし、わたしの心は少しずつ別の方向に向かっていた……。そして専門学校進級の直前、わたしは担任にあることを相談した。
「何となくだけど、やりたい事が見つかったー!」
おじさんの家を訪れたのはその頃。わたしの考えについて肯定してもらいたくて、両親に伝える前に話しに行った。既に自分の中では決定事項だったから、相談ではなくてあくまでも報告。
翻訳の勉強はとても興味深く、面白かった。勤労学生の彼も、水を得た魚のように生き生きと学び、目標を明確にして就職活動に励んでいた。わたしは――二年次から、大学編入を目指すクラスに移ろうと考えていた。両親もおじさんも要くんも、『わたしの好きにすれば良い』というスタンスなので反対されることはなかったけど、当然迷いも大きかった。
件の彼にもわたしの目標を話してみたら、『頑張れ!』と強く応援してくれた。『いろんな事情で苦しんでいる子供たちが、少しでも救われるといいな』とも……。彼の言葉が最終的な後押しになった。
高校の卒業式から、来春で二年。年末に、成人の記念写真を家族で撮影した。一緒の写真に納まることを頑なに嫌がったおじさんと要くんの説得は、両親がしてくれた。(『あの二人が来ないなら、撮影しない!』って、わたしが駄々を捏ねたから)その時には既に、卒業後の進路が決定していた。
わたしは専門学校卒業後、私大の2年次に編入する。専門学校に二年通ったから大学の3年次に編入できるといった単純な計算ではなく、あくまでも履修した単位数に応じた学年への編入という事だ。
「偉いよな。結局、あと三年も勉強するんだもんな」
僕には真似できないなー! なんて、要くんが嬉しそうに笑う。
「自分で決めた目標に向かって学ぶんだから、弱音だけは吐くなよッ!」
ちょっと意地の悪そうな笑みで、おじさんが私に発破をかける。
「うわっ! 航の言い方きついなー! 唯ちゃん、いつでも弱音を吐きにおいで。僕がちゃんと聞いてあげるからね?」
「有難う。でも、今度は頑張ってみる。いろいろ考えて自分で決めたことだから……」
そうだ。こんな風に大切に守られていたからこそ、今の自分がいる。今度は、微力でもわたしが――
「そうだな。きっと頑張れるよ! でも、いつでも話しにおいで、な?」
おじさんと要くんは、わたしの事なのに、自分たちの事のように喜んでくれた。勿論、両親だってこの二人以上に――!
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