Prologue

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「ステキ――」  本当に。それは、思わずため息が出ちゃうほど美しい写真だった――「すごくいいね、この写真」そんな風に心の底からの言葉をわたしが吐くと、凄く嬉しいくせに! はにかむ様な……少しばかり控えめな笑顔を作った。でも、短時間で我慢の限界に達しちゃったみたい。 「……だろ? そうだろう? 僕もそう思うんだよね! もうさあ、これは僕たち二人だけ(・・・・)の一生の宝物なんだ」  嬉しそうにニマニマ笑う顔! やっぱりこっちの方が断然()い! 癒される。  晴天の師走――高い空はどこまでも澄み渡り、空気はキーンと張り詰めている。確実に寒いんだけど、この家に入った途端に『あれ? 寒かったっけ』と感じてしまう。うーん。何て表現したらいいのかな? 例えば、ニュースで流れてくる凄惨な事件の数々……それが現実の出来事であったとしても、架空の出来事なのではないかな? と思えてしまう感じ。ドアを潜ると、いきなりそんな錯覚に陥る。  そう、ワンダーランドだ! ――踏み入った途端、時間が一瞬にして止まってしまったような、巻き戻ってしまうような。うん。それが一番しっくりくるかも。とにかく、ここは――わたしのお気に入りの家。ここには、わたしの大切な家族が住んでいるから。  わたしの名前は、鷹野(たかの) (ゆい)。  今日は、折に触れて心配ばかりかけてきたこの家の二人に、就職が内定したことを報告にきた。多分、ママかパパから先に聞いているかもだけど……直接、自分の口から伝えて、手放しで喜んでくれる姿を見たい! そう思ってやってきた。
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