タスケテ。

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「えっと……唯ちゃんが今17ってことは、僕が初めて唯ちゃんと会ったのは唯ちゃんが四つの時だから、うわ~! もう、あれから十三年!? あっという間に大きくなっちゃったねえ」  要くんが驚いてからしみじみと言った。初めて会ったのが幼稚園の時で、『唯は要くんに直ぐに懐いたのよー! 会う度に帰るまでピッタリ張り付いてたわね』とママが言ってた。ちょっと恥ずかしいかも。 「僕さあ、一人っ子で親戚とも付き合いが全くないもんだから、小さい子と接したことが無かったんだ。だから航がお姉さんに会わせてくれて、幼稚園の制服を着た唯ちゃんに初めて会ったときはどう接していいか分からなかったんだよ。でも、唯ちゃんが膝にちょこんと乗ってくれた時、ああ、可愛いな~って思った」 「そんな小さい時のこと、わたし憶えてないよー!」  照れ臭い。でも、何となく憶えてる――きれいな要くんに引き寄せられた子供の頃のわたし。二人の関係を知ったのは中学の時。新居お披露目でここに訪れた日の帰り道――『なんで、おじさんと要くんは一緒の家に住むの?』と訊いたわたしに、『航と要くんは、家族として同居を始めたの。パパとママと同じで、同性だけど愛し合ってるのよ』って、いとも簡単に言ってくれた。パパも隣でニコニコしながら『うんうん』と頷いていた。  この日、わたしは人生初の失恋(・・)を経験したのだ。  同性で愛し合う――二人のデリケートな関係性を、中学生のわたしに対して端的に伝えてくれた両親には心から感謝している。お陰で、初恋を拗らせずにすんだし。  パパとおじさんは幼馴染で親友。小学と中学でずっと一緒にサッカーをやっていた仲間。中学の時におじさんの部屋で勉強をしていたパパが、偶然ママを見かけて一目惚れ(・・・・)したんだって。ママが美人なだけでなくかなり優秀だと知ったパパは、それからママのために一生懸命勉強したっていうんだから、ちょっと引く。 『航はパパの恋のキューピッドなんだ。なんてったって、ママと出逢わせてくれたんだからな』  だから、おじさんが要くんのことを『付き合ってる』と紹介してくれた時、『全力で応援しようと思った』って言ってた。ママも同じ考えだって――おじさんは、高校の時に要くんに一目惚れしたけど何もできないまま進路が分かれて没交渉。何年も経ってから運命の再会(・・・・・)を果たして今があるらしい。  ママと一緒でかなり優秀だったおじさんは、父親の勧めで狭き門といわれている最難関の国立大付属高校を受験して落ちた。その後、私大付属高の三年間学費免除という制度を使い、親の反対を押し切って入学。そこで、要くんに出逢ったという。    その時に聞いた、おじさんと要くんの高校時代の話がとても興味深かったことを思い出した――そして要くんなら、もしかしたら……今の私の気持ちを一番理解してくれるのではないかと、一縷の望みを抱いてここにやってきたのだ。
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