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わたしは要くんの高校時代の様子に、俄然興味が湧いた。
「ねえねえ、要くん。要くんの高校時代の話を聞かせて欲しいな……」
「うん、構わないけど。でも、面白いことは一つもないよ? 全然楽しくなかったし。それより、航に聞いた方がいいんじゃないか? あいつはスポーツ万能で勉強もできて、系列大学の中でも優秀な学部に一番乗りだったんだよ? 自慢じゃないけど、凄いんだぞ!」
おじさんのことなのに、自分の事のように胸を張る要くん……本当に、要くんは公私共におじさんの事を尊敬してるし好きなんだね! 少し心がチクンとするけど、でも、そんな風におじさんを自慢する要くんのこと、素直に尊敬する。わたしにも、将来そんな風に自慢できる人が現れるといいな、って思うよ。
「……いいの。おじさんの高校時代はリア充でしょ? もっと言うと、パパとママも。理想的な生活を送ってきた人の話しには、全然興味ない。……要くんが嫌じゃなかったらでいいんだけど、要くんの高校時代のことを聞かせて欲しいんだ」
友達の話と言った割りに、真剣に語っちゃったかも!? バレちゃったかな?
「ふーん。そうかあ。僕の話しなんか、つまんないと思うけどな……」
要くん、黙り込んじゃった――どうしよう。
「唯! おまえ、玄関のところに何か置き忘れてるぞ」
絶妙なコンビネーション! おじさんがキッチンから顔を出して話しかけてくれた。
「あッ! ごめん。あれ、おじさん達にお土産で買ってきたんだった! 忘れてたー」
それは、わたしの住む家の近くにある老舗洋菓子店のシュークリーム。前にママから、おじさんの子供の頃からの大好物だって聞いていたから買ってきた。因みに私も大好き! 手作りのカスタードクリームは甘過ぎなくて、皮が薄くて柔らかい。小振りだからいくらでも食べられちゃうんだけど、それってダイエットには最悪なんだよなー。
「前にママがね、『おじさんが好きなお菓子だよ』って言ってたのを思い出して、買ってきたんだ」
「サンキュー! これ美味いんだよ、懐かしいな。それにしても、あの店まだやってたんだな」
「あのお店って、そんなに古いんだー!」
あはは。おじさん、また眉根を寄せて少し怒った顔してるし。
「じゃあ、これは夕食後のデザートだな!」
「お! 楽しみだなー」
要くんが袋の中を覗き込んで「うわ、美味そう! ありがとう、唯ちゃん」と言った。おじさんのアシストで、要くんが復活。
「夕食はここで食べるって、ママに連絡しとかなきゃ」
「帰りは車で送ってやるから安心しろ」
「おじさん、サンキュー!」
良かった――
ここ最近、何かを言いたいけど、何も言い出せない雰囲気の両親と食事を共にするのが息苦しかったから。スマホを取り出して、送信完了。
「早いなー! もう送ったの?」
「トーゼン!」
目をまん丸くする要くん。うん、やっぱり要くんは癒しの存在!
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