ワタシノハナシ。

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ワタシノハナシ。

「要くんって、カノジョ(・・・)とか、いたことあるの?」  つい、興味津々で関係ないこと訊いちゃった。 「うん、あるよ」 「……えッ?」 「でも、あいつと付き合い始めてからは無いからな? 変なこと言うなよなー!」  クスクス笑いながら、要くんがわたしに釘を刺した。やだ、信用無いの? と思ったら少し悲しくなって『わたし、こう見えても口は固いんだからねー!』と、唇を突き出して怒った振りをした。うん、勢いがついた! 話そう。聞いててね、要くん。  わたしは現在(いま)、高2の三学期。この春、高3に進級して受験生になる予定。  公立中に通っていたわたしは、高偏差値で地域の誰もが一度は憧れる公立高校に入学。因みに、ここは両親の母校。合格した時には、奇跡(・・)だと冷静に自己分析をした。頑張って合格した憧れの学校だから、落ち零れるわけにはいかない。だから、必死に勉強に励んだ。お蔭で入学後も順調に成績を伸ばし、常に上位をキープ。でも……。  ――突然だった。それは、突然わたしの中で発芽した。非常に素朴な、それでいて重大な疑問だった。 「わたし、一体何のために頑張ってるんだろう?」  息をするように。当たり前に日々勉強に励んだ。学校生活もソツなくこなせている、と思う。でも、面白味のない日常――だからって、なにが面白いのか分からない。興味関心事が見つからない。ファッション? 髪型? 趣味? 遊び? ……どれにも興味が湧かない。  自覚はあった。小学生の頃から、他者を斟酌する能力が著しく欠落している自分。集団行動が苦手。だからこそ、慎重に慎重に……人との関係を築いてきた。正直言って、親友(・・)と呼べる相手はいない。でも、孤立したことや、虐めに遭ったことは無かった。それは、親が早い段階から自分に勉強をさせ、希望があればなんにでも挑戦させてくれた賜物だと思う。誰もが、わたしの持つ比較的高い能力に対して一目置いてくれている。褒めて支え、自信(・・)という見えない鎧を装備してれた両親には、心から感謝している。  ――多分、ガス欠なんだと思う。そう自覚したのは、高2に進級した直後。  なんだか、虚しい――勉強する目的が分からない。良い大学に行く為? じゃあ、良い大学に入ったらどうすんの? 大体さあ、やりたい事が無いのに学部選べるわけないじゃん! 理系? 文系? どっちでもイイし。ああ、もうヤだ! 全てを投げだして逃げちゃいたい! でも、両親の顔を思い浮かべると……、できない。恵まれ過ぎている自覚があるから、始末に負えない。
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